小渕恵三さんが総理大臣だったころ、嬉しそうな表情で便箋3枚に書かれた文章を見せてくれたことがある。「大蔵大臣からこれを貰った」。宮沢用箋と記された便箋には、間違いなく筆ペンの宮沢喜一さんの字が躍っている。マスコミが小渕さんを「ボキャ貧(語彙不足)」とか「真空総理」とかからかっていたころのことである。「いわゆる『真空』の効用について老子の説くところを高覧に供します」という書き出しである。「大成は欠けたるが如く其の用弊(やぶ)れず 大盈(えい)は冲(むな)しきが如く其の用窮まらず」「本当に完成しているものはどこか欠けているように見えるが、いくらつかってもくたびれがこない。本当に充実しているものは一見無内容に見えるがいくら使っても無限の効用を持つ」と解説がついており、最後に「老子第45章」と出典が記してあった。
大成は欠けたるが若く、其の用、弊(やぶ)れず。大盈(たいえい)は冲(むな)しきが若く、其の用、窮まらず。
大直(たいちょく)は屈するが若く、大功(たいこう)は拙なるが若く、大弁(たいべん)は訥(とつ)なるが若し。
躁(そう)は寒に勝ち、勢は熱に勝つ。清静(せいせい)にして天下の正と為る。
大成若缺。其用不弊。大盈若冲。
大直若屈。大功若拙。大辯若訥。
躁勝寒。静勝熱。清靜爲天下正。
Chapter 45.
1. Who thinks his great achievements poor
Shall find his vigour long endure.
Of greatest fulness, deemed a void,
Exhaustion ne'er shall stem the tide.
Do thou what's straight still crooked deem;
Thy greatest art still stupid seem,
And eloquence a stammering scream.
2. Constant action overcomes cold; being still overcomes heat.
Purity and stillness give the correct law to all under heaven.
(Thanks: translated by Mr. James Legge)
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