2008/04/17

バックラッシュ=低脳右翼=低脳医学=オカルト




「ホリスティックな医学」というヴィジョンは、1920年代に、西洋近代の臨床医学の<内部から>作られたということである。(holistic medicine という言葉が作られたのは 1926年である。)この、既存の医学の特徴を意図的に乗り越えようとしたヴィジョンが作られるときには、最先端の実験医学の成果も動員された。(著者は明示的には触れていないが、おそらくメチニコフや内分泌学のことなどを念頭においているのだろう。)その意味で、これらが実験医学と対立しないどころか、それと重なるのは当然である。臨床医たちがこのヴィジョンを持つにいたった制度的な駆動力は省略するが、その一つは、臨床の医療が官僚的な制度の下に組み込まれていったことの批判がある。そして、何よりも重要なのは、このホリスティックな医学というヴィジョンの背後には、医者たちの現代社会への批判と不安があったということである。伝統的家族・共同体の絆が壊れて、人間が断片化していくのを目の当たりにした(あるいはそう信じ込んだ)医者たちの社会批判が、新しい医療のヴィジョンを生んだ。そして、この社会批判としての新しい医学のヴィジョンが、戦後に引き継がれ、現代の「還元主義的な医学」「バイオメディシン」の批判に至っているという図式である。
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