2007/11/17

北米とブラジルでは性のエトスが大きく違う。ブラジルでは「性的市民権」の概念は極めて薄い。ブラジルの男性たちは、性的快楽のためには何でもアリのポルノトピア的な空間を想像し、それを生きている。




北米とブラジルでは性のエトスが大きく違う。ブラジルでは「性的市民権」の概念は極めて薄い。ブラジルの男性たちは、性的快楽のためには何でもアリのポルノトピア的な空間を想像し、それを生きている。あらゆる種類の性的嗜好を自由に楽しみ、バイセクシュアリティの間で流動的に振舞うことが男たちの間で広まっている。処女が少ないからその代わりだとうそぶいて、アナル・セックスの処女を奪う男たちや、配偶者にアナル・セックスを強要する夫たち。貧しい家庭の親に遺棄されて、路上で売春を強要されて暮す少年・少女たち。オカマとさげすまれ、何をやっても受けいれるとされる女装者たち。こういった空間には、アメリカの高い教育を受けたゲイの間で成立していた「性的市民権」などありえない。強者による弱者へのむき出しの強制としての性行為があるだけである。その中で広がる感染を食い止めるためには、コンドーム装着を教育してセーフ・セックスを呼びかけるのとは違うアプローチが必要であるというのが、筆者の主張である。
 ちなみに、キューバでは状況は全く反対である。キューバはエイズの流行を初期段階で押さえ込むことに成功したが、それはリスクグループには検査を義務化し、HIV陽性者をサナトリウムに収容するという、古典的な検査―隔離モデルに基づくものであり、人々を監視し隔離するメカニズムの勝利であった。
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